鋼管うんちく

開先形状には種類がある|開先の基礎知識と代表的な開先形状について

2025.07.01
開先形状には種類がある|開先の基礎知識と代表的な開先形状について

溶接の品質と強度を左右する重要な要素のひとつが「開先(かいさき)」です。開先とは、溶接する際に金属の断面に施す溝のことで、主に溶接の接合強度を高めるために施される加工となっています。この開先にはV形、I形などの種類があり、資材や目的に合わせた形状で加工されるのが一般的です。

本記事では、開先の基礎知識から、代表的な開先形状の種類とその特徴について解説します。また、難易度の高い開先加工にも対応できる宮脇鋼管のサービス内容にも触れているので、ぜひ参考にしてください。

開先とは

開先とは

開先とは、溶接を行う際に金属の断面に設けられるV字やI字などの溝のことです。開先を設ける工程を「開先加工」、接合作業を「開先溶接」と呼びます。

開先加工は、主に溶接の強度・品質の確保を目的としています。開先加工をせずに溶接すると溶着量が少なくなり、溶接欠陥の原因となる可能性があります。

ポイント

開先の形状や角度は、産業ごとの規格に基づいて設計・加工する必要があります。母材の板厚や溶接箇所に応じて調整は必要ですが、公差の範囲内で開先の形状・角度を決めましょう。

関連記事:開先溶接のコツは?開先加工の基礎知識や欠陥の発生原因について

開先形状の種類

開先形状の種類

開先形状の種類は、以下のとおりさまざまです。

【開先の種類】

  • I形
  • レ形
  • V形
  • J形
  • U形
  • X形
  • K形
  • 両面J形
  • H形

ここでは、代表的な開先形状の「I形」「レ形」「V形」「J形」「U形」について紹介します。

I形開先

I形開先

I形開先は、金属の接合面を削らず、平らなままの断面同士の開先です。主に薄板の溶接やアーク溶接の際に採用されることが多く、コストパフォーマンスや作業効率に優れています。

I形開先の主な利点は、開先の加工が比較的簡単に行える点です。さらに、使用する溶接材料が少量で済み、溶接時間が短いため、溶接後の熱影響による変形量が小さくなります。

しかし、断面同士が平らになっていることが原因で、接材が裏側まで届きにくく、部分的な溶け込みに留まってしまうケースがあります。特に厚みのある板だと、I形開先では十分な強度が得られない可能性があるので、別の開先形状の採用を検討しましょう。

レ形開先

レ形開先

レ形開先は、断面がカタカナの「レ」のような形状をしており、片側だけに角度をつけて加工する開先形状です。開先加工が比較的簡単であり、建築資材によく用いられています。

ただし、レ形開先を採用した溶接で一定の強度を確保するためには、開先角度をどうするか、ルート面(未開先部)をどの程度残すかといった設計上の判断が重要になります。適切な条件を設定しないと、溶け込み不足による強度低下を招くおそれがあるため、経験に基づいた知識と技術が不可欠です。

扱いやすい反面、正確な施工が求められる点がレ形開先の特徴といえるでしょう。

V形開先

V形開先

V形開先は、V字のような断面の開先で、もっとも一般的な開先形状です。レ形開先とレ形開先で突合せ溶接継手になると、V形開先になります。加工がしやすく、作業効率の面で優れており、厚みのある板の背面まで溶接できる点が特徴です。

ただし、V形開先は溶接後の形状が左右で非対称になりやすく、それが原因で角変形が大きくなる傾向があります。特に高い強度が求められる場面だと、開先部と接合材を裏面まで一体化させなければなりません。そのような場合に、「完全溶け込み溶接」という方法が採用されます。

完全溶け込み溶接は、複数回にわたって溶接を重ねることで、開先内部を隙間なく一体化させる方法。高品質な接合が求められる場面において、広く活用されています。この完全溶け込み溶接によって、V形開先でも十分な強度を確保することができます。

J形開先

J形開先

J形開先は、片側に角度をつけるレ形開先に緩やかな曲線を加えた形状です。その断面がアルファベットの「J」に似ていることから、J形開先と呼ばれています。

厚板にJ形開先を採用すれば、溶着量を抑えつつ、溶接幅を小さくすることが可能です。溶着量が少ないことで、熱による歪みや材料コストの削減にもつながり、効率的な施工が実現できるでしょう。

ただし、J形開先は平面や直線の開先と比べて、開先加工の難易度が高くなるという課題があります。仕上がりの精度や材料の節約を重視する場面に適していますが、それに見合った加工設備や技術力の確保が必要です。

U形開先

U形開先

U形開先は、その名のとおり断面がU字状になっており、開先面が滑らかな曲線で構成された開先形状です。J形開先とJ形開先で突合せ溶接継手になると、U形開先になります。特に厚みのある板においては、U形開先を用いることで溶接による金属の質量を抑えられ、変形を小さくできます。

しかし、U形開先は母材の片側がR(曲面)になっており、開先加工が難しい点がデメリットです。溶接の品質や強度を確保するためには、条件に応じた適切な開先形状の選定が重要になります。

開先形状を決める際の注意点

開先形状によって、溶接の難易度や溶接後の強度などは変わります。開先形状を決める際には、溶接によって得られる金属の質量、すなわち溶着量に注意しましょう。

溶着量が少ないほど、加熱による歪みが起きにくくなり、必要な溶接材料の使用量が抑えられます。そうした意味では、溶着量はできる限り少なくすることが理想的です。

しかし、溶着量を減らすために開先の断面積が小さい形状を選ぶと、かえって溶接欠陥が発生しやすくなります。一方で、開先の断面積が広すぎる形状では、溶着量が増えて変形リスクが高まります。

開先溶接で欠陥が発生する場合の多くは、必要な部分が十分に溶融されなかったことが原因です。開先形状を決定する際は、母材の板厚や溶接箇所に応じて最適な形状を選定しましょう。

関連記事:開先角度とは|ベベル角度との違いと決める際のポイント

宮脇鋼管の加工サービス

宮脇鋼管の加工サービス

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