開先加工は溶接方法の中でも特に強度を高めることができる技法ですが、欠陥が発生しやすい加工方法でもあります。接合強度や外観品質を高いレベルで確保するには、適切な開先形状の選択・設計・処理を行う必要があり、これには経験値や知識、営業など他チームとの連携も必要不可欠です。
そこで今回は、宮脇鋼管の強みの一つである開先溶接について、基礎知識から欠陥が発生する原因、対策のコツについてご紹介します。
開先溶接の基本的な内容が知りたいという方をはじめ、「開先加工をどこに依頼したら良いかわからない」「他社で断られてしまった」という方も、ぜひ業者選びの参考にご覧ください。
目次
開先溶接の基礎知識
溶接作業を行う際、金属の断面に設ける溝を「開先(かいさき)」といいます。そして、開先を設ける作業を「開先加工」、接合する作業を「開先溶接」と呼んでいます。
開先溶接の目的
溶接にはいくつか溶接継手があり、施工性や求められる品質などによって使い分けられますが、開先溶接は特に接合部分の強度を高めたい場合に採用されます。
開先溶接は金属の端と端を合わせて溶接する突合わせ溶接の中でも、断面を完全に溶け込ませる完全溶け込み溶接を目指す際に用いられる方法で、開先形状の種類や角度、深さ、幅、接合する面積などを工夫することで、強度を調整することができます。
開先形状の種類について
開先形状には、アルファベットの「I」の形に溶接するI形開先溶接や、開先を斜めに入れて「V」の形に溶接するV形開先溶接、カタカナの「レ」の形に溶接するレ形開先溶接などがあり、板厚や溶着量などを考慮して開先形状を選択します。
【開先の種類】
- I形
- V形
- レ形
- X形
- U形
- K形
- J形
- 両面J形
- H形
なお、この中で最も一般的な開先形状はV形開先です。
開先溶接の内部欠陥と表面欠陥
溶接時に発生する不良は溶接欠陥と呼ばれ、開先溶接の場合は内部欠陥と表面欠陥の大きく2パターンに分けられます。
内部欠陥とは溶接部内に存在する不良を指し、主に溶融金属への入熱不足や熱源位置の不良などによって発生します。内部欠陥の例としては、溶着金属内の気泡(ブローホール)や、溶接境界面の接着不足(融合不良)などが該当します。
対して表面欠陥とは外観に見られる不良を指し、熱源の移動速度や移動幅の差などが主な原因となります。表面欠陥には、表面から盛り上がった融着金属の過大及び不足(余盛り過大・余盛り不足)や、ビードの表面に生じるくぼみ穴(ピット)などがあります。
内部欠陥の発生原因と対策のコツ
次に、開先溶接時に発生しやすい内部欠陥「ブローホール」「溶接割れ」「溶け込み不足」「融合不良」「スラグ巻き込み」について、これらの発生原因と対策のコツについて見ていきましょう。
発生原因と対策のコツ①:ブローホールについて
ブローホールは、溶接金属内で発生したガスもしくは外部から侵入したガスの残留によって、溶着金属内に空気が閉じ込められ、空洞になってしまう状態です。
ガスの侵入要因としては、シールドガスの不足や乱流といったシールドガスに起因するもの、ワイヤ突き出し長さやトーチ角度といった溶接条件に関するものなどが挙げられ、シールド状態を適切に確保することや防風対策、溶接部の洗浄処理などで対策を行います。
発生原因と対策のコツ②:溶接割れ
溶接割れは溶接部付近で生じる亀裂や割れを指し、内部だけでなく表面にも現れやすい欠陥です。
溶接割れには金属が凝固する際に発生する高温割れや、冷却後に発生する低温割れなどがありますが、これらの原因としては、温度の変化によって溶接金属に含まれる成分の一部が不均質になったり、凝固時の収縮応力に耐えきれなかったりといったものが挙げられます。
対策としては、予熱・後熱を行う、溶接入熱を高める、過大な高速応力が生じないように溶接条件を工夫するなどがあります。
発生原因と対策のコツ③:溶け込み不足
溶け込み不足とは設計溶け込みに比べて実溶け込みが不足している状態を指し、溶け込みが不足していると、継手の強度が低下したり、亀裂が発生したりする恐れがあり大変危険です。
溶け込み不足の原因としては、溶接速度や開先形状などの溶接条件が適切でない、溶接材料の選択が適切でない、溶接電流が低下している、入熱量が不足している、アークが不安定などが考えられます。
対策としては溶接条件や溶接金属を見直す他、溶け落ちが発生しない程度で溶接電流を強めにし、溶接電流に対して適切な溶接速度で作業を進めるといった方法が挙げられるでしょう。
発生原因と対策のコツ④:融合不良
融合不良とは、溶接境界面が融着していない状態を指します。溶け込み不足と同様に、継手の強度低下や亀裂発生の恐れがあるため、慎重に予防しなければならない欠陥の一つです。
融合不足は入熱不足や熱源操作不良、溶け込みの浅さなどが原因として挙げられ、溶接条件の修正や熱源操作の工夫、溶接前に形状を修正するなどで対策するのがポイントとなります。
発生原因と対策のコツ⑤:スラグ巻き込み
スラグ巻き込みとは、溶接中に生成されるスラグ(削りカス)が溶接金属より先に凝固して、金属内に残留する状態を指します。
スラグ巻き込みの発生原因は、適切な熱源操作や、前工程でのスラグの除去不足などがあり、対策としてはスラグを丁寧に除去すること、またスラグを除去する際に解離性が高い溶剤を使用することが挙げられます。加えて、開先角度の不足や過大なウィービングに注意が必要です。
表面欠陥の発生原因と対策のコツ
次に、開先溶接時に発生しやすい表面欠陥「余盛りの過大・不足」「アンダーカット」「オーバーラップ」「ピット(開口欠陥)」について、これらの発生原因と対策のコツについて見ていきましょう。
発生原因と対策のコツ①:余盛りの過大・不足
余盛りは溶接部の強度を高めるためにあえて溶着金属を盛り上げることです。
余盛りが過大状態だと母材と溶接金属との境界面に応力集中が起こり、疲労強度が低下する恐れがありますし、反対に余盛りが不足していると母材の厚みが凹むが凹んでしまい、強度が足りなくなるなどの影響が発生します。加えて、余盛りの過大・不足は外観品質も損なわれます。
余盛りの過大・不足は、溶融池の大きさに対して熱源の移動速度が速すぎる、もしくは遅すぎる場合に発生しやすいので、適切な速度を維持することがコツとなります。
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発生原因と対策のコツ②:アンダーカット
アンダーカットとは母材の表面と溶接金属の表面が接する部分に発生する溝を指し、アンダーカットが生じると外観品質や接合部の強度が低下する恐れがあります。
アンダーカットは、溶融池に対して熱源の移動が速すぎるか、溶着する金属量が少ない時に発生しやすいので、速度を遅くする・溶接電流を下げるなどで対策を打っていきます。また、溶接棒やトーチを開先に当てないのがコツだと言えるでしょう。
発生原因と対策のコツ③:オーバーラップ
オーバーラップとは母材の表面と溶接金属の表面が接する部分で、溶接金属が母材の上に重なり、溶着しないで凝固した状態を指します。
オーバーラップはアンダーカットと真逆で、溶融池に対して熱源の移動速度が遅い時、溶着する金属量が多い時に発生しやすくなるため、溶接速度を速くする、溶接電流を高くするなど溶接条件を見直して対策します。上手くいかない場合は、溶融池の形とアーク長を確認しながら作業すると良いでしょう。
発生原因と対策のコツ④:ピット(開口欠陥)
ピット(開口欠陥)とは、溶接金属内に発生したガスがビード表面に現れた小さなくぼみのことです。
ピットが生じる原因はシールドガスの乱れや母材表面のサビ・油分などのガス化、水素残留などが考えられます。そのため、シールドガスが適切に供給されているか、母材表面に汚れが付着していないか、風による影響を受けていないか、適切なトーチ操作ができているか、ノズルスパッタが除去されているかなどで対策を打つのがポイントです。
開先加工・開先溶接の業者選びで迷ったら…
私たち宮脇鋼管の開先加工範囲は小径〜大径、薄肉~厚肉、直切断〜斜め切断、丸鋼管〜角鋼管など、組み合わせ無限大です。また、図面を見て注意点を把握し加工・寸法チェックを行うことに加えて、営業側でも加工依頼をする際に図面書式を統一して指示するなど、溶接欠陥が生じないように丁寧に進めています。
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