
板金やパイプに施す穴あけ加工は、ドリルによる切削加工をはじめ、レーザー加工やプラズマ加工などさまざまな方法で行われます。
穴あけ加工は一見単純そうですが、少しの狂いが最終的に大きな不具合を生じさせることもあるため、素材の特性の見極めや慎重な作業が必要です。
今回の記事では、鋼管などに施される穴あけ加工の種類や方法について紹介するほか、穴あけ加工の注意点についてもまとめていきます。
目次
穴あけ加工とは

穴あけ加工とは、パイプや板金などの材料に穴を形成する加工方法の総称です。ドリルを使用する切削加工のほか、レーザー加工やプラズマ加工、パンチング加工、フライス加工などの方法があります。
穴あけ加工は、機械類の正常な動作や安定した建築のためにはなくてはならないものであり、金属加工の中では最も使われている加工方法です。
穴をあけるだけの単純そうな加工に思われますが、実は、穴あけ加工の工程で精度の高い出来上がりになっていなければ、後の工程すべての精度に影響が出てしまいます。そのため、精密な作業が必要となる穴あけ作業には、知識と経験、熟練の技が必要です。
穴あけ加工で用いられる主な加工方法
鋼管や鋼材の穴あけ加工には複数の加工方法があり、加工する材料や求められる精度、生産量などによって適した方法が異なります。主な加工方法の種類は以下の通りです。
| 穴あけ加工の方法 | 概要 |
|---|---|
| 切削加工 | ドリルなどの工具を使用して材料を削りながら穴をあける加工 |
| レーザー加工 | レーザー光を一点に集中して照射し、材料を融解・蒸発させて穴をあける加工 |
| プラズマ加工 | 高温のプラズマアークを利用して金属を切断し、穴を形成する加工 |
| パンチング(打ち抜き)加工 | プレス機で金型を押し当て、板状材料を打ち抜いて穴を形成する加工 |
| フライス加工 | フライス工具を回転させながら材料を削り、円形や異形の穴を加工する方法 |
プラズマ加工にはパイプコースター、パンチング加工にはプレス機、フライス加工にはNCドリル・フライス複合機などの設備が使用されます。
関連記事:プラズマ加工とは?切断の原理やレーザー、ガス切断との違いについて
穴あけ加工で使用する道具の種類

穴あけ加工と一口に言っても、あける穴にはさまざまな形状があるため、穴あけ加工を施す鋼材によって適切な機械や工具を選び、一番無駄がなく精度の高い出来上がりになる方法をとらなければなりません。
まずは、ドリルによる穴あけ加工でどのような道具が用いられているのか、広く利用されているものをご紹介します。
ボール盤
ボール盤は、金属や木材などの素材に、ドリルを使用して手動で穴あけを行う加工機のことです。
ボール盤の本体は、回転するチャックという部品にドリルやホールカッターといった切削工具を装着して手動で上下させる部分と、テーブルやクランプという素材を固定するための部分に分けられます。
ドリル
ドリルは穴あけを行うための部品で、ドリルが回転することで素材が切削されて穴があけられます。
一般的には、らせん状の溝が付いたツイストドリルが広く利用されますが、穴あけ加工の種類によって、ストレートドリルやロングドリルなど、さまざまな種類のドリルを使い分けて加工を施します。
リーマ
リーマとは、ドリルなどによってあけられた穴を広げながら、滑らかに仕上げるための部品です。ドリル加工後の穴に棒状の部材であるリーマを通すことで、所定の寸法に整えます。
穴あけ加工の種類

穴あけ加工では用途に応じた切削方法で、最も無駄がなく、精度が高い完成品になる方法を選ぶ必要があります。ここからは、穴あけ加工の中でも代表的な5種類の加工方法についてご紹介します。
浅穴加工
浅穴加工とは、ドリルの直径の3倍以下の長さになる穴をあける加工方法です。スタブドリルやショートドリルなどが利用されます。
深穴加工
深穴加工とは、ドリル直径の10倍を超える穴をあける加工方法です。
深穴加工は、浅穴加工と比較すると機械は特殊になり技術も必要となります。深穴用のドリルにはロングドリルやスーパーロングドリルといった全長が長いドリルを使用しますが、通常のドリルと比べて折れやすいため、扱いには細心の注意を払わなくてはなりません。
ソリッドドリリング加工
ソリッドドリリング加工は、未加工の状態の素材に穴をあける際に用いられる加工方法です。浅穴加工の一つで、無垢穴加工とも呼ばれています。
トレパニング加工
トレパニング加工は、主に大径の穴加工に用いられる方法で、材料を円筒状に切削します。切り屑が出るのではなく、芯材として残すことができるため、再利用がしやすいと注目されています。
ソリッドドリリング加工と比べるとより少ない動力で穴あけが可能で、深い穴にも対応することができます。
カウンターボウリング
カウンターボウリングは、すでにあけてある穴を大きくしていく加工方法です。
先にソリッドドリリング加工などで小径の穴をあけておき、そこにカウンターボーリングで加工を施すことで、必要としている穴の径まで仕上がり面の精度を調整しながら広げることが可能です。
穴あけ加工をする際の注意点

穴あけ加工は、工具や素材の材質、工具と素材の取り付け方法、機械の能力によって大きく精度が左右されます。
以下の注意点は、穴あけを安全かつ適切に行うために気をつけたいポイントです。
切削条件の調整
穴あけ加工の精度を高めるためには、切削条件を以下の適切な値に調整する必要があります。
②主軸速度:ドリルの回転速度(rpm)
③切り込み量:ドリル一枚当たりの送り量(mm/rev)
※mm/revは、ドリルが1回転で何mm進むかを表した単位
特に③の切り込み量は、切削後の切り屑の形状に大きく影響してくるためmm/revを低く設定しすぎないよう注意が必要です。
摩擦熱への対策
穴あけ加工時には切削工具で金属を削り取るため、大きな摩擦熱が発生します。この摩擦熱により、工具の変形を引き起こす恐れがあるため、摩擦熱への対策が必要です。
一般的な摩擦熱対策としては、切削熱を低くする手段が有効です。
そのためには、機械加工では切削点に向かって切削油剤を供給して、部分冷却を行います。切削油剤は潤滑性があるため、せん断変形を縮減して、発生熱量を抑制することができるのです。
部材の固定
穴あけ加工時には、穴をあける部材をしっかりと固定しなければ穴位置がずれてしまうとともに、金属に工具が当たった際に工具が破損して吹き飛んでしまう恐れがあります。
図面通りに正確に切削するためには、正しい固定が必要です。
穴位置の寸法設定
切削加工の場合は、特殊な穴あけを除いて概ね以下の手順で加工されます。
②下穴をあける(ドリル加工)
③用途に応じ、特定加工を施す(リーマ加工、ネジ切り加工、ザグリ加工など)
特に①のセンター穴の位置設定は、後の工程を精度よく行うため非常に注意が必要です。ドリルの位置決め用ガイドとして、ドリルのチゼル(ドリル先端の中心部の刃が無い部分)よりも少し大きめのセンター穴をあけることを想定し、位置を決めることがポイントです。
切り屑の除去
切り屑は、丁寧に処理ができていないと機械の中に溜り、作動不良を起こしたり製品に傷をつけたりする恐れがあるため、切り屑処理は、穴あけ加工を行う上でとても重要な要素です。
切り屑を除去するためには、以下の3つの方法があります。
特に切り込み量を調整し、切り屑の形状を小さくすることが必要です。②チップブレーカーを変える。
旋盤用チップに彫り込まれた溝を、メーカーの工具カタログを確認しながら適切に変更し、切り屑を適切に分断する必要があります。③振動切削機能を使用する
振動切削機能付きの旋盤機械を使用し、切り屑を適切に分断させることも手段としては考えられます。
材質・板厚によって異なる穴あけ加工
穴あけ加工では、加工するものの材質や板厚によって適した加工条件が異なります。材質・板厚ごとに硬さや粘り、熱の伝わり方などの特性が異なるためです。
ここでは、薄鋼板・厚鋼板・ステンレス鋼を例に、それぞれの特徴や穴あけ加工を行う際に押さえておきたいポイントを紹介します。
薄鋼板
薄鋼板は一般的に板厚0.3〜3.2mm程度の鋼板を指し、自動車や電気機器の部品などに広く使用されています。板厚が薄いことから材料がたわみやすく、ドリルによる加工時には押し付ける力で変形が発生しやすい点が特徴です。また、穴あけ時にはバリや裏側のめくれが生じる場合があります。
特に注意したいのがドリルの食い込みです。薄鋼板ではドリルが急激に材料へ入り込むことで穴の形状が乱れ、円形ではなく三角形状に近い穴になる場合があります。
そのため、薄鋼板を穴あけ加工する際には、材料をしっかり固定したうえで適切な回転数や送り条件を設定し、加工することが重要です。
厚鋼板
厚鋼板は、一般的に12mm以上~数百mmの鋼板を指します。材料が厚くなるほど切削抵抗は大きくなり、工具への負荷が増加するほか、穴が深くなることで切り屑の排出が難しくなります。そのため、加工精度の低下や工具破損を防ぐための管理が重要です。
また、厚鋼板の穴あけ加工では、切削熱への対策が必要です。切削油剤を適切に供給しながら加工を行い、切削熱による工具の焼き付きや摩耗を防ぎましょう。
ステンレス鋼
ステンレス鋼は耐食性に優れる一方で、穴あけ加工の難易度が高い材料として知られています。最大の特徴は加工硬化が強い点です。加工中に材料が硬くなり、削り続けるほど切削抵抗が増加します。
さらに、熱伝導率が低いことで発生した熱が材料へ逃げにくく、工具側に熱が集中しやすい傾向があります。また、粘りが強く切削しにくいことから、加工不良や工具摩耗の原因となることがあります。
ステンレス鋼を加工する際には、回転速度を上げすぎないことが重要です。過度な発熱を防ぎながら、適切な切削条件と十分な切削油剤を用いて加工することで、工具寿命の低下や加工精度の悪化を抑えられます。
パイプや鋼材の形で異なる穴あけ加工

穴あけ加工は、部材の特性を見極めながら行わなければいけませんが、それと同時に注意したいのが鋼材の形状です。鋼材の形ごとに特徴や加工時の注意点が異なるため、それぞれ分かりやすくまとめておきます。
丸パイプ
貫通穴の場合、ドリル加工やプレス加工が手動であると、穴あけの芯々を正確に出すことが難しく、穴がずれてしまう恐れもあります。
また、貫通孔がずれてしまうことで切り屑もパイプ内に残り、作業者の怪我の原因となる場合もあるので注意が必要です。
角パイプ
角パイプは、パイプ製造時において、ロール成型後に高周波溶接により部材のつなぎ合せを行います。その際に発生する溶接痕の盛り上がりを溶接ビードと称します。
溶接ビード上に穴あけ加工が生じる場合は、穴の径や位置により部材耐力が低下する恐れがあるため、できる限り溶接ビード上を避けるか適切な補強を行う必要があります。
H形鋼
H形鋼は、建築資材の柱や梁等の長物として使われることが多いため、丸パイプや角パイプに比べ重量があり、穴あけの際に材料を反転させる作業に非常に手間が掛かってしまいます。
またH形鋼は、ウエブ部分(中央の板部分)に穴をあけることが多く、H形鋼を寝かせてフランジを固定し、プレスやドリルで穴あけを行うことが一般的です。
穴あけ加工の精度を安定させるために重要なこと
穴あけ加工の品質を安定させるためには、穴をあける技術だけでなく、加工条件や設備、工具の状態まで含めた総合的な管理が欠かせません。
宮脇鋼管では、加工精度を安定させるために、ワーク固定やセンタリング(位置決め)、加工内容に応じた工具選定を重視しています。また、回転数や送り条件を適切に設定し、切削熱の管理をしながら加工を行うことで、品質の安定化を図っています。
さらに、機械剛性の確保や工具摩耗の管理、深穴加工への対応、加工順番の最適化などにも配慮し、高精度な穴あけ加工を行っています。
このように、穴あけ加工の品質は一つの要素だけで決まるものではありません。宮脇鋼管では長年培ってきた加工ノウハウを活かし、多角的な視点から加工条件を管理することで、安定した品質の穴あけ加工を実現しています。
穴あけ加工は鋼管加工のベストアドバイザー宮脇鋼管へ

宮脇鋼管では、長尺加工機にて角パイプへの四角穴加工を施したり、丸鋸切断機を併用しての湯抜き穴加工、長尺加工機のエンドミルを使用した大径穴加工など難しい穴あけを行ってきました。また、切断と同時に穴あけも行うので、寸法のズレが生じることもありません。
また、レーザー・プラズマ・ガスによる溶断穴あけと、上面と左右面の3軸方向から3本のドリルにて自動加工を行うドリルソーによるドリル穴あけ、複数のフライスカッターを自動で使い分ける切削加工と、用途にあった穴あけが可能です。
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