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ステンレスパイプの溶接方法は?失敗を防ぐポイント

2024.04.26
ステンレスパイプの溶接方法は?失敗を防ぐポイント

ステンレスパイプは錆びにくく衛生面にも優れているとして、住宅の水回りや自動車といった身近なものから、エネルギープラントや浄水場などの大規模な施設まで、さまざまな用途・場面で活躍しています。

最近ではホームセンターで安価に手に入ることから家具などをDIYされる方も多いのですが、一方でステンレスパイプの溶接加工は金属加工の中でも難しいとされる部類に入ります。

そこで今回は、ステンレスパイプの溶接について、難しいとされる理由や溶接方法、失敗を抑えるためのポイントをご紹介します。

これからステンレスパイプの溶接にチャレンジしてみたいという方や、基礎知識を知っておきたいビギナーの方、またステンレスパイプの溶接をどの業者に依頼しようか悩んでいるという方など、ぜひ参考にご覧ください。

ステンレスパイプの特性と溶接が難しいとされる理由

ステンレスパイプの原料であるステンレスは、主成分となる鉄(Fe)を10%以上、クロム(Cr)を10.5%以上、炭素(C)を1.2%以下含む合金です。

「stainless」にはもともと「錆びない・錆びにくい」という意味があり、文字通り錆びにくい素材として、特に水や塩水の被害に遭いやすい場所で使われています。

なお、ステンレス特有の錆びにくさは、クロムが酸素と結びつくことで表面に形成される不動態皮膜によるものです。

ステンレスは錆びにくいという特性以外にも、耐熱性・強度・加工性などに優れていて、綺麗な状態を長く保つことができるといった特徴を持ちますが、その一方で、種類によっては溶接熱によって母材が変形しやすかったり、精度を上げるには経験や慣れによるところが大きいため、難易度が高い素材であるのも確かです。

というのも、ステンレスにはオーステナイト系・フェライト系・マルテンサイト系・析出硬化系などの鋼種があり、さらにJIS規格では70種類以上、海外の規格を含めると200種類以上に細分化されます。それぞれ添加されている成分や含有量が異なるので、溶接時の特性にも違いが現れ、これがスレンレスパイプ溶接が難しい・経験が必要と言われる理由の一つだとも言えるでしょう。

化学成分分類 金属組織分類 代表例
Fe-Cr系 マルテンサイト系 SUS420
フェライト系 SUS430
Fe-Cr-Ni系 オーステナイト系 SUS304
オーステナイト・フェライト系(二相系) SUS329
析出硬化系 SUS630

この中で配管の材料として採用されることが多いのは、腐食・孔食に対する耐性が高いオーステナイト系ステンレスで、他のステンレス系と比べて溶接性は良好ですが、応力集中に注意する必要があります。

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ステンレスパイプの溶接方法

ステンレスパイプの溶接方法

次に、ステンレスパイプの溶接方法について見ていきましょう。

ステンレスパイプの溶接方法①:被覆アーク溶接

被覆アーク溶接は放電現象を利用する溶接方法で、母材となるステンレスパイプと同じ種類のステンレスを使った溶接棒を電極として、母材と溶接棒の間で発生するアーク放電による熱で溶接を行います。

被覆アーク溶接の特徴としては、必要物品が少ないことです。アーク溶接機、アースケーブル、ホルダー、溶接棒があれば溶接できます。また、ケーブル内部にガスやワイヤーが通る事もないので取り回しが楽で、さらにガスを使わないので風の影響も受けません。

しかしシールドガスの代わりにフラックスが被った状態なので、その皮のような物を剥がす必要があります。そのため、ステンレスの溶接には一般的にはあまり使いません。「とにかくくっつけばいい!」という時以外はおすすめしない溶接方法です。

ステンレスパイプの溶接方法②:TIG溶接(ティグ溶接)

TIG溶接(ティグ溶接)はアーク溶接の一種で、正式名称を「Tungsten Inert Gas溶接」といいます。アーク溶接の中でも、電極にタングステンという金属を使用し、別で溶加材を用意するのが特徴です。

TIG溶接は不活性ガスシールドを用いるので、溶接金属への不純物混入が極めて少なく、高品質な溶接ができます。また、スパッタの発生が無く後処理が楽で、あらゆる継手形状に適用でき、かつ溶接姿勢に制限がありません。そのため、工業的に使用されるほとんど全ての金属の溶接が可能です。

さらに、小電流でも安定したアークが得られ薄板溶接にも適用でき、また裏波溶接がしやすいというのも特徴の一つ。パルス溶接機能や電極、溶接棒なども幅広くあり、ステンレスパイプの溶接に一番使われている溶接方法となっています。

ただし、溶接に時間がかかる点や、他の溶接に比べてタングステンやアルゴン、ヘリウムガスなどコストがかかることに注意が必要です。

ステンレスパイプの溶接方法③:MIG溶接(ミグ溶接)

MIG溶接(ミグ溶接)もアーク溶接の一種で、正式名称を「Metal Inert Gas溶接」といいます。
TIG溶接と同じくアルゴンやヘリウムなどの不活性ガスを用いてワークを保護する仕組みですが、非溶極式(非消耗電極式)のTIG溶接と違い、電極となる溶接棒やワイヤが消耗される「溶極式」に分類される溶接方法となります。

MIG溶接の特徴としては、溶接スピードが速いことと、美しい仕上がりが実現できることが挙げられるでしょう。

ただし、100%のガスを使うと安定性に欠け、集中性の無いアークになりやすく、溶接不良がおこりやすいので、溶接するステンレスの種類や用途に応じて、混合するガスの種類や量を選定する必要があります。

ステンレスパイプの溶接方法④:MAG溶接(マグ溶接)

MAG溶接(マグ溶接)もアーク溶接の一種で、MIG溶接と同様にシールドガスを用いる溶接方法です。

MAG溶接は主に鉄や軟鋼の溶接に使用される溶接方法で、ステンレスパイプの溶接にはあまり向きません。ですが、MIG溶接だけでは強度が不十分だと判断された場合は強度を高める目的でMAG溶接と組み合わせて溶接を行うことがあります。

ステンレスパイプの溶接方法⑤:レーザー溶接

レーザー溶接とは、レーザー光を熱源として溶接する方法です。アーク溶接よりも熱源を小さく絞り込むことができ、また集光レンズによってエネルギーが高密度化されているので、局所的な溶接や、融点が異なる材料同士の溶接にも使用されます。

また、大気中で溶接作業ができるのでガスを発生させる必要がありません。

その一方で、レーザー溶接は他の方法と比較して出力が低めです。母材となるステンレスパイプが分厚い場合には適さないのでご注意ください。

ステンレスパイプを溶接するポイント

ステンレスパイプを溶接するポイント

ステンレスは鉄と比較して溶けやすい性質を持ちます。ですので、鉄と同じように溶接すると、熱の入りすぎによって母材に穴が空いてしまったり、酸化して黒ずみ汚くなってしまったりといったことが起きます。

ステンレスパイプの溶接は、母材となるステンレスの種類や大きさ、形状に合った方法を選択するのが非常に重要だと言えるでしょう。

ポイント

母材となるステンレスの種類や大きさ、形状に合った溶接方法を選択すること

具体的にどのような点に注意して溶接すべきか、ポイントや工夫について見ていきます。

ポイント①:熱の入りすぎを見直す

熱の入りすぎを防止するには、溶接部分の隙間を少しでも減らして、加工にかかる時間や熱の影響を少しでも抑えられるように、前工程の作業を工夫しておくことです。

また、パルス機能を使うことや、銅板を敷いて溶接したり、断熱ジェルなどを使って熱を逃がしたり遮断したりするのもポイントです。

ポイント②:入熱範囲を見直す

TIG溶接やMIG溶接、MAG溶接は入熱範囲が広くなりがちで、入熱範囲が広がるほど入熱量が増えて穴が空きやすくなります。適切な入熱範囲を維持するには、トーチが母材から離れすぎないように気をつけましょう。

ポイント③:ガスレンズを使用する

ガスレンズとはコレットボディに網状のメッシュがついた部品です。ガスを整流することで遠くまでガスが吹き付けられるため、ガスのシールド効果が高まり、少ないガス流量で母材の酸化を防止することができます。

ポイント④:仕上げ作業を見直す

溶接跡の見栄えを整えたい時は、仕上げ時にグラインダーなどで研磨するのも一つの方法です。見た目の美しさがアップするだけでなく、凸凹がなくなることで粉や液体などの不要物を滞留させないという衛生的なメリットにも繋がります。

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ステンレスパイプと異素材の部品は溶接可能か

通常、ステンレスパイプは同じステンレスでできた部品と繋ぎ合わせるように設計します。また、ステンレスは鉄が主成分ですので、鉄パイプなどの鉄でできた部品とも溶接が可能です。

このように、溶接は同じ素材でできたものや同じ成分でできたものと繋ぎ合わせることを前提としますが、製品の都合上、化学成分が異なる素材と接合しなければならない場面があります。このような溶接を「異材溶接」や「異種金属溶接」といい、通常の溶接と比べてより高度な技術が要求されます。

例えば、アルミなどの溶ける温度が異なる素材との溶接はかなり難しく、溶接できたとしても強度に心配があるため、製品として成立しないことがほとんどです。

この場合、リベット接続など他の接合方法を考えたり、設計段階から見直す必要があります。

私たち宮脇鋼管では、他社では断られたという難しい加工でも、図面や鋼管選びからサポートさせていただき、納品まで責任を持って立ち合わせていただいております。ぜひ一度ご相談ください。

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